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介護保険よもやま話

ブログ

第7話

2025-12-03
注目チェックNEW
保冷グッズに予算がついた!
炎天下での移動中に胸元に入れているという保冷板を示して酷暑の訪問介護の実態を説明する藤原るかさん(中央)=厚生労働省で
ほぼ8割が熱中症の症状を体験したと答えた訪問介護へルパーのアンケート。過酷な実態を明らかにした結果を持参し、調査主体の「ケア社会をつくる会」が厚生労働省に直談判に行きました。応対した老健局長は「今年の夏さは災害に匹敵する。どんなことができるか検討する」と前向きな答弁をしたのですが、11月末に閣議決定した補正予算で保冷グッズなどの購入補助が出ることになりました。アンケートの詳細は「介護保険よもやま話」第6話で詳述しています。酷暑は厳しさを増しているだけに、現場としては来夏に向けてほっと一息、というところです。

暮らしネット・えんの小島美里代表理事は「訪問介護の報酬削減の影響で実質的な赤字になり、十分な保冷グッズを買えるほどの余裕がない」と老健局長にアピールしました。厚労省へ要請する前に開いた記者会見では、東京都品川区のヘルパー藤原るかさんが板状の保冷剤を示し「この板を胸元に入れて体を守る。首に巻く保冷ベルトでは足りないわけです。また、凍らせたペットボトルを2,3本携行して口に含み、のどが焼け付くのを少し収める」と、酷暑下での訪問介護の実態を説明しました。

補正予算資料によると、「介護事業所等に対するサービス継続支援事業」で、国が4分の3、都道府県が4分の1の割合で訪問介護事業所には最大で50万円まで補助します。保冷材などは「介護サービスを円滑に継続するための対応」としてネッククーラー、冷感ポンチョ、熱中症対策ウォッチなどを例示しました。全国のヘルパーが訴えて勝ち取った補助金だと思います。

ただ、この事業には飲料水や食料品備蓄という大規模災害への備えも入っているなど、酷暑対策だけでないのが気になります。こうした災害時の対応は本来別建てで補助金を用意すべきであり、老健局長が「災害対応を介護の分野でもやらなきゃいけない」と言っていたのはそういうことかと思いました。

さらに言うと、「訪問・送迎の移動に伴う経費」も今回の補助メニューに入っています。厚労省は「移動や待機の時間に対する報酬は事業所に出す介護報酬に含まれる」と言っていますが、介護報酬の仕組みは身体介護や生活援助を提供した時間で分けられており、多くのヘルパーは移動や待機時間はほぼ無給の状態です。本来なら、移動や待機、利用者がサービスをキャンセルした状況を調べてそこに介護報酬を付けるのが筋。移動の経費に補助が出るのは画期的と言えばそうですが、わずかな補助金でお茶を濁したという批判は免れそうにありません。



第6話

2025-11-23
注目重要
酷暑の中での訪問介護
今年の夏の暑さは異常でした。 気温が体温を超える日が続出し、さらに40度超えという地域も珍しくない。そんな中、灼熱の外気を縫うようにしてバイクや自転車で走り回るヘルパーたちが、日本の訪問介護を支えています。「ケア社会をつくる会」が今年8月から9月にかけて、全国の訪問介護などのヘルパーを対象に行った緊急アンケートをしました。酷暑下の訪問介護をテーマにしたアンケートは、恐らく初めて。その結果は、この過酷な実態を浮き彫りにしました(下部に詳報)。

「利用者宅のトイレ掃除で、めまいを起こしてとっさに手すりにつかまり、座り込んでしまったことが3回あった」「エアコンが付いていない部屋の掃除や家事援助、入浴介助が非常につらい。自分自身の健康を考え、この仕事を辞めたいと思っている」

 アンケートで書かれたヘルパーたちの叫びです。

具体的には、熱中症の症状が「時々」または「よくある」と答えた人が46.9%。めまいやふらつき、頭痛、だるさなどですが、症状が出ても病院を受診していない人は92.1%と大半でした。こまめな水分・塩分補給や保冷グッズを身に着けるなどの自衛手段をしている人は多かったのですが、限界があります。利用者宅間を移動する炎天下も厳しいのですが、高齢者は冷房を嫌ったり、高騰する電気代の節約のためクーラーをつけない人は少なくありません。エアコンのないお宅もあります。


アンケートでは「エアコンの付いていない部屋での掃除をすると、シャツが絞れるほどの汗をかき、めまいを感じる。35度超えの外気の方が涼しく感じる」「窓から熱風が入り、頭がクラクラとしてくるが、利用者さんは『扇風機で涼みながらやって』と言う」「帰宅後に脱水症状で動けず、吐き気で水も飲めず病院に行くこともできなかった」という深刻な声も出されました。次の利用者宅に自転車やバイクで行く移動時間は介護報酬の対象ではなく、移動の手当てをもらえないヘルパーさんは多いのです。しかも、保冷材など猛暑対策経費は一部自治体を除いて自腹というのが現実です。


アンケート結果を携え、「暮らしネット・えん」の小島美里代表理事らが厚生労働省に直談判に行きました。えんでも、利用者宅で熱中症を起こして動けなくなったヘルパーを救助に向かったことが何回もあります。厚労省で応対した老健局長もさすがに、「今年は災害に匹敵する、サービスのベースにかなりの影響が出るような暑さ」と深刻さを認め、物価高を背景としたサービス提供のコストとしてどんなことができるかを検討すると明言しました。東京都などが補助をしている保冷グッズなども参考にする考えです。


35年間ヘルパーを続けている東京都品川区の藤原るかさん(70)は「のどが焼けて息ができなくなり、命の危険を感じた」と話します。アンケートでも同様な声が目白押し。もはや、真夏の訪問介護はヘルパーの命を懸けて行う仕事になったと、一人でも多くの人に知ってほしいと思います。










第5話

2025-11-02
注目重要
「軽度者」って誰のこと?
現在進行中の社会保障審議会介護保険部会では「軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方」が議論されています。財務省の財政制度等審議会も含め政府の審議会でよく出てくる「軽度者」とは、誰のことでしょうか。

現行制度では、総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の主な対象となっている要支援1・要支援2の人を指しています。ところが、最近の議論では意味が変わっています。総合事業の対象でない、保険からサービス給付を受ける要介護1・要介護2の人も含めているのです。介護保険部会で検討されているのは、2014年の法改正で要支援1と2の人への訪問・通所系サービスを介護保険本体の給付から外して自治体の総合事業に入れたように、要介護1と2の人への訪問による生活援助などを総合事業に移すという案です。

介護保険は発足から一貫して給付が削減されてきたのですが、「ここまで来たか」という感じ。政府の頭の中では、要介護1と2は「軽度」であるという認識なのです。

では、要介護1や2と判定された人はどんな状態なのか。

認知症がある要介護1と2の人について、9月にあった介護保険部会では、介護現場の委員が「ADL(日常生活動作=起居や食事、排せつ、移動などの動作)が自立している要支援者と異なり、認知機能が低下し、排泄、着脱、洗身など介護給付サービスがなければ自立生活が困難な状態像にある」と説明。そして、「もし(総合事業に)移行すれば専門サービスが受けられず、自立を阻害し、重度化を招くおそれがある」と複数の委員が総合事業への移行に強い反対の意見を述べました。

要支援の人が受けている総合事業による訪問サービスでは、なぜだめなのか。

厚労省が作成した表(このページ右肩の図)にあるように、総合事業は資格を持ったヘルパーだけでなく、地域住民など多様な人たちに担ってもらうのが国の狙いだからです。認知症の介護には専門性が不可欠。単に訪問して食事づくりや掃除などの援助をするのではありません。お年寄りの心身の状況をよく見て、尊厳を保持しながら自立支援に役立つ生活援助を行うには、専門知識と経験が必要だからです。生活を維持するための細やかなサービスが受けられなければ、認知症の状況が悪化する可能性は大きいといえます。

要介護1と2の人の生活援助を総合事業に移す案は、これまでも先送りされてきた経緯があります。介護保険部会では「2027年度に始まる第10期介護保険事業計画開始までに結論を得る」となっています。政府の狙いは介護費用の削減ですが、国政選挙で複数の政党が社会保障費削減を叫ぶ中、今回はどうなるのか。介護保険部会では反対意見は根強いのですが、介護現場の危機感は高まっています。



第4話

2025-11-01
注目オススメ
事業者撤退が相次いだ「総合事業」
介護保険四半世紀の歴史では、要介護度の低い人を対象から外す方向で進んできました。

最初は、2005年の介護保険法改正で設けられた「要支援1」「要支援2」です。これらの人へのサービスは新たに設けた「介護予防サービス」として、従来からあった訪問介護やデイサービス(通所介護)などの利用を制限しました。さらに2014年の法改正では、訪問介護とデイサービスを介護保険の給付から除外し、自治体による介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業、17年度までに段階的に移行)に移してしまいました。

介護保険では、利用者が使ったサービス費は保険から給付されます。総合事業の事業費も基本的には介護保険本体と同じで公費と保険料で構成されていますが、保険者である市町村に対して給付の上限額が設定されています。給付額だけで賄えない場合は市町村の負担となるわけですが、負担できるかどうかは財政力次第。ここで、受けられるサービスに自治体で格差ができるということになりました。

本来、介護保険は全国一律の制度。自治体が独自のサービスを上乗せすることなどは認められていますが、どこに住んでいても保険料さえ支払っていればサービスの量や種類に格差がないのが原則です。スタート当初は事業者の参入具合が地域によって違ったため、特に過疎地や離島などで保険料を払っても一部のサービスが受けられないといことが問題視されました。現在進行中の社会保障審議会介護保険部会では、大都市や中山間地・人口減少地域といった規模別で持続可能な介護サービスをどう確保するかが話し合われています。ここでも、出席者から「いかなる地域であってもサービス量やサービスの質が見劣りすることなく維持されることを強く望む」との声が出されました。

 総合事業では実際、多くの自治体のサービス単価は介護保険メニューより低く、近年のヘルパー不足もあって、運営への影響を懸念する事業者の撤退が続出しました。特に大手は総合事業を受けないと言われています。要するに、もうからないからです。ある大手事業者は「報酬の低さもあるが、自治体によって基準や申請フォームがバラバラで事務作業が膨大だから」と言っています。 

少し古い調査ですが、2020年4月の段階で、東京23区でほぼ2割の事業者が総合事業の仕事を受けていませんでした。 実はこれ、想定内のことだったのです。総合事業への移行をめぐって2018年2月、厚生労働大臣が「250の自治体で撤退する事業所がある」と国会で答弁。「多くの介護難民が出る」と騒ぎになりました。特に、訪問介護の生活援助は、高齢者の心身の状況が落ち込まないように生活を支えて介護予防、自立支援をするという大きな目的があったはず。必要な生活援助が受けられず、日常生活や心身の状況が悪化した高齢者がどれくらいいたのか。国は調査すべきではないでしょうか。

第3話

2025-10-20
チェック
目の敵にされ続ける生活援助
介護保険の創設を提言した、1996年4月の老人保健福祉審議会の最終報告。「はじめに」の部分で、「社会的な連帯によって高齢者の介護を支える社会を創るときが来ている」として、「痛みを分かち合って必要な社会的負担を受け入れることを訴えたい」と国民に呼びかけています。「人間としての尊厳が大切にされる社会、高齢者の尊厳と幸せを大きな目標とする社会」を作ろうとアピールし、そのために新たな国民負担となる保険料支払いを受け入れてもらうよう求めました。今読み返してみても、実に格調高い、社会福祉の理想に燃えた文章です。家族介護から脱却し、社会で介護を支えようと目指す姿を明確に掲げた報告でした。

中でも、特に注目されるのは「いわゆる虚弱老人に対する家事援助サービスについて」と一項目を設けているところです。虚弱老人とは、今の要介護認定で「要支援1」「要支援2」と判定された高齢者のこと。「寝たきりの予防や自立への支援につながるような形でのサービス提供を介護給付の対象にすべきである」と明記されています。

ところが、介護保険25年の歴史では、掃除や調理などの家事援助(生活援助)は一貫して目の敵にされ、利用制限が強化され続け、介護報酬の削減が行われてきました。なぜ、生活援助は目の敵にされてきたのか。

介護関係の審議会の傍聴を続けている団体「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」の小竹雅子さんは「審議会では、生活援助は家族(女性)がやるものだという意識が最初から強かった。誰でもできる、安く使えるパートのおばさんの仕事という感覚のままずっと来ている」と話します。生活援助は家庭の主婦や娘がやればいい、介護保険で面倒を見る必要はないと言わんばかりの意見が出されたこともあったようです。

報告が書いている「寝たきり予防」「自立への支援」となるサービスは、主婦なら誰でもできるという家事の代行ではありません。高齢者一人一人の状態、生活スタイルに合わせた支援があってこそできる、専門性の高い仕事だと指摘する現場のヘルパーや有識者はたくさんいます。

家族介護からの脱却を高らかに訴えた約30年前の審議会報告は、いったいどうなってしまったのでしょうか。今こそ、介護保険創設当初の理念を振り返るべきだと思います。



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