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第38話
第37話
「自治体の圏域内に介護支援専門員(ケアマネ)が1人もいない。いても、要支援の人は隣接自治体に頼んで(ケアプランを)持ってもらっていた。でも、その隣接自治体ですらも人手がなくなって、『要支援のプランを持てない』と返されてしまっているという自治体がある。自治体の圏域内のヘルパーの平均年齢が70歳を過ぎているなど、10年後にはどうなるのだという自治体も存在しております」
6月29日の社会保障審議会介護保険部会。全国市長会の代表として出席した逢坂伸子・大阪府大東市長は、特定地域となる可能性のある自治体の現状をこう説明。「具体的な制度論について検討もされていない現時点におきまして、市町村にとって現実的な選択肢になり得るのか、懸念もある」と指摘しました。
同日の部会は、中山間地・人口減少地域の介護サービス不足に向けて、今回の介護保険法改正で創設された「特定地域」での新制度に関する議論のスタート。サービス事業者が存在しないか少ない場所で、介護保険給付でなく市町村の事業として訪問介護などを行う新制度「特定地域居宅サービス等事業」を、市町村が実際に選択できるのか疑念の声が続出したのです。
別の委員は、人口が減る離島で85歳以上の高齢者が増え、認知症の人が非常に多くなっていると指摘。深刻な状況で自治体がどう対処すべきか「実際は途方に暮れている状況」といいます。「仮に特定地域に指定されたとしても、サービスの質を確保したり、(介護)職員の負担を軽減するという問題は解決の糸口が見いだせない」と話しました。
このコラムの第35話で取り上げた通り、今回の改正法では衆院で27、参院で15もの付帯決議がつきました。同日の部会では付帯決議をきちんと踏まえるよう求める意見が次々と。「特定地域の適用がなし崩し的に拡大することがないような適切な運営を」「付帯決議の趣旨を踏まえながら人材確保や処遇改善と併せ慎重な議論を」「効率化の名のもとに地方都市や一般市へなし崩し的に拡大し、全国の介護サービスの最低基準を押し下げる構造的な危険性を強く懸念します」…。特定地域では人員配置基準を弾力化(緩やかにする)できるとされますが、「今でも介護現場は深刻な人材不足に直面している。そのような中で弾力化されれば、現場の介護従事者の負担増につながることが懸念される」との意見も。介護報酬は上がらず低賃金のまま仕事の負担が増えるのであれば、人材不足はさらに加速する負のスパイラルになるのは明白です。「労働条件が悪化すれば、利用者へのサービスが低下する可能性がある」という委員の声を、きちんと受け止めるべきでしょう。
「人口が減るから介護ニーズが減るという前提は成り立たない。保険給付から自治体の裁量に委ねる予算事業へと変質させることは、住み慣れた地域での介護を受ける権利そのものを脅かす」(和田誠・認知症の人と家族の会代表理事)。「同じ介護保険制度の中でサービス給付から外れる地域が生まれるということについては、制度そのものが崩れてしまう契機となる」(石田路子・NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長)。法改正そのものに疑問符を突き付ける意見が審議会では依然あることを、明記しておきたいです。
第36話
では、それが可能になる「特定地域」とはどこなのか。6月29日に開かれた社会保障審議会介護保険部会で、厚生労働省は来年4月の施行に向けて、「特別地域加算や離島等相当サービスの対象地域」を特定地域とする素案を示しました。特別地域加算とは、介護サービス確保が著しく困難な地域でサービスを提供している事業所向けの介護報酬の加算です。人員配置や設備基準などを満たさなくても「一定の質を持つ居宅サービス」を提供している離島なども対象としました。
厚労省によると、全域もしくは一部地域で特定地域加算を受けているのは894市町村、離島等相当サービスは883市町村。全市町村数数のそれぞれ52%、51%に当たるのです。人口が減り続けるわが国では既に、過半数の市町村で介護が崩壊している場所がある、もしくは崩壊しかかっていると言えるかもしれません。
素案ではこのほか、介護サービスの需要が高まる75歳以上人口に着目した指標や基準を設定するという案も示されました。75歳以上の人口は2078万人。うち要介護認定を受けている人は640万人(認定率30.8%)です。どんどん進む高齢化については大都市部でも同じ。「特定地域」について厚労省はわざわざ「中山間・人口減少地域」と注意書きを付けていますが、もはや「特定地域」が山間部や離島だけのものではないことは明らかです。














