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第12話
2026-01-10
注目重要
深刻化する地域格差
「介護保険は全国的な制度として実施するわけですから、地域によって利用できるサービスに大きな差が出ないよう、国としても(中略)積極的に支援していくことにしています」
これは、介護保険制度発足当時に厚生省老人保健福祉局が監修して作った市民向けパンフレットに書かれている文章。Q&A形式で「保険料を払えば、地域で必要なサービスが受けられるのでしょうか」という質問に対する答えで出てきます。
国の制度だから、全国どこにいても同様なサービスが受けられると思いがちですが、介護保険の実施主体(保険者)は区市町村。自治体の置かれた地域や、予算や熱意によっても差が出る仕組みです。介護報酬を見ても、20%上乗せとなる1級地の東京23区から8段階に詳しく分かれています。ちなみに埼玉県新座市は10%上乗せの5級地。同じサービスを提供しても介護報酬に差があるので、近隣に1級地がある都県境の新座市での事業所開設は得策ではないということになります。
当時は「よりよいサービスを目指して地方自治を競い合うことができる」と長所を指摘する人もいました。しかし、図らずもこのパンフレットで国が認めているように、事業者が少ない離島や山村は都市部に比べて当初から不利でした。この点について「農協や民間の非営利団体、市町村が運営する診療所を中心としたサービスなど、地域の実情に応じた工夫が期待されます」と書かれています。「地域の皆さん、自分たちで頑張ってね」と言わんばかりで、事業者確保で国から特段の財政支援があるわけではありません。保険料を納めても地域によってサービスが十分に受けられない実態は、当初からありました。
昨年末に社会保障審議会介護保険部会がまとめた「介護保険制度の見直しについての意見」では、地域を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3つに分類。このうち「中山間・人口減少地域」は、高齢者人口が減りサービス需要が減少する地域と定義し、必要なサービス維持のため人員配置基準を緩和したり、サービス提供に応じた出来高払いのほかに包括的な報酬(月単位の定額払い)も選択できるようになりました。包括的報酬は2027年度にも実施される見通しです。
しかし、介護保険部会では「どの地域であっても、必要なサービスを同じ水準で提供し、受けられることが確保されなければならない」とする声や、基準の緩和でサービスの質確保に疑念の声が出たほか、包括的報酬では少ないサービスで割高な利用料となる可能性も指摘されました。国が言う「全国的な制度」の地域格差は深刻化し、人口減少や介護職員不足への対処とはいえ、制度は足元から大きく揺らいでいるのです。
2023年推計の「日本の地域別将来推計人口」によると、介護が必要になる可能性が高まる75歳以上人口は、2030年まですべての都道府県で増加するとのこと。それなのに、人員配置基準の緩和を進めてよいものかと不安になります。人口減少で介護を支える人材が減るのが現実なのかもしれませんが、これまで維持されてきたサービス水準を低下させる事態に、介護保険料を支払ってきた私たちは耐えなければならないのでしょうか。










